…部屋にDEMが座っている。
胸の部分に大きな破損があり、
瀕死の状態だ。
それを見ていると、
エミル族らしい少年が声をかけてきた。
DEMが眼を覚まし、話しかけてきた!
>DEMの少女についての話を選択
今までの経緯をクォーク博士に話した。
どうするの? →まだ待って →セーブポイントを変え、地下に進む
>まだ待ってを選択
>セーブポイントを変え、地下に進むを選択
大破したDEMが横たわっている…。
(回想開始)
―指令ガ下ッタ― ―動作しない肉体に何の価値がある?― ―ボクらは、きっとわかりあえる― 自身のメモリー内に、 別の記憶が流れ込んでくる! ―悲しくなんてないよ― ―だって君は…ボクの大切な人だから―
空間自体に違和感を感じる。 まるで、夢の中にいるような感じだ。 目の前にいる2体のDEMも、 こちらの存在には気付いていないようだ。 指令ガ下ッタ。 オ前ニハ「エミル種族」ノ 未来ノ指導者トナル者ヲ 暗殺シテモラウ。 奴ハ今ハマダ恐レル存在デハナイガ 成長スレバ我々ノ脅威トナルト 予測サレル。 了解。 この姿と言語プログラムも、 そのためでしょうか? ソノ通リダ。 オ前ノ外見ト言語プログラムヲ カスタマイズシテオイタ。 了解。 …しかし、ヒトの趣向というのは 理解しかねます。 マッタクダ。 シカシ、ソノ姿ナラバ 一般人ニ気付カレルコトナク 潜入デキルダロウ。 一般人の格好なのでしょうか? 前ニ偵察ヲ行ッタトキハ、 ソノ姿ガ溢レテイタナ。 少シ古イカモシレナイガ、大丈夫ダロウ。 目標ノデータヲ転送シテオイタ。 …了解。 では、任務の実行に移ります。 二人が話し終えると、 どこからともなく声が聞こえてきた。 …それは、 頭の中に直接語りかけるような声。
「私はこうして、
敵の本拠地へと足を進めた」
「所詮、ヒトを1体殺すだけの、
簡単な任務だ…」
嬢ちゃん、どこ見て歩いてるんだ? 人にぶつかっておいて、挨拶も無しか? 挨拶…? …。 ……こんにちわ。 ああ、こんにちわ。 …って違う! そういう意味じゃない! こんにちわ。 こんばんわ。 ごきげんよう。 おつかれさま。 さようなら。 …どうだ? どれも違う! ってか嫌味にしかなってねぇよ! もういい! とりあえず、殴らせろ! …対象に強い攻撃意思を確認。 反撃に…。 へぶっ! 何だお前、邪魔しやがって! ぼ、暴力は良くないと思います…。 こいつが詫びを入れないのが悪いんだよ! 邪魔だ! どけ! 痛いですけど、どかないです…。 …チッ、勝手にしろ! (対象の戦意喪失を確認、 通常モードに移行…) だ、大丈夫かい? 何が? その言葉は、 手負い状態にある者に対して 言うのが正しい。 いやまぁ…そりゃそうなんだけどね。 まぁ、無事でなによりだ。 理解不能…。 いや、それはこっちの台詞…。 まぁいいや、 次からは気をつけたほうが良いよ。 今、気が立ってる人が多いから…。 ……。 それじゃあね。 ……。 頭の中に声が響く。
「絶好の機会だったというのに、
攻撃すらできなかった」
「理解不能な出来事の連続に、
私の思考は混乱していたのだと思う」
「何故、彼が見知らぬ私を助けたのか」
「そのときはまだ、
その行動の意味がわからなかった」
これでよし…っと。 何をしている? …おや、君は。 奇遇だね。 返答になっていない。 …お墓を作ってるんだよ。 …戦いで、散っていった者たちの。 「埋葬」と言う概念があることは 認識している。 しかし、対象に機械を 含んでいることが理解できない。 エミル種族だけならまだしも、 お前は機械までも「埋葬」している。 機械って…DEMのこと? うーん、僕は彼らのことを 「機械」だって思ってないよ。 …理解不能。 そもそも、埋葬するという行為自体、 無駄なことだ。 動作しない肉体に何の価値がある? 動作しないって…。 亡くなった人に価値が無いと思ってたら、 そもそもこんなことしてないよ。 では、動作不能な者に 価値があるというのか? 価値があるとか無いとかじゃないよ。 こうやって弔ることで、 その人たちの魂が安らぐよう、 願いを込めているんだよ。 ……理解不能。 ……理解…不能。 …君も、DEMだよね? …! そんだけ変なこと喋ってればね、 流石に分かるよ…。 でも、僕は君と争う気は無い。 さっきから、襲おうと思えば 襲えたわけだしね。 ……。 僕はいつでもここにいるから、 戦いたくなったら来れば良い。 …もっとも、僕は戦う気は無いけどね。 それじゃ、また。 ……。
「私はイラついていた」
「理解不能なことに対して感じた、
言語化できない気持ち悪さ」
「…それの正体が知りたかった」
「だから私は、彼と会うようになった」
「……彼は不思議なヒトだった」
「彼の行動…
いや、ヒトの行動の何もかもが、
不思議だった」
「彼は私をDEMと…
敵だとわかっていながら、
私に色々なことを教えてくれた」
「長い時を過ごしていくうちに、
いつしか私もヒトの中に馴染んでいった」
「……それが、私に与えられた任務」
「このヒトを殺し、
私たちの勝利を完全なものにする」
ボクはね、
僕らとDEMの和平を実現したいんだ。
ボクらは、きっとわかりあえる。
だって…君とわかりあえたんだから。
「…何故、
このヒトを殺さなければ
ならないのだろう?」
「……何故、
このヒトの笑顔を消さなければ
ならないのだろう?」
「だって、このヒトは…
私にとって大切な……」
「大切な……?」
「ああ…そうか」
「これが、好きだってことなんだ」
「彼の言葉は偽りがなく」
「一緒にいる時間はかけがえなく…」
あぁ、やっぱりここにいた。 どうしたの? そんなに悲しそうな顔をして。 悲しくなんてない。 ただちょっと……ちょっとだけ不安。 …そっか。 無理もないよ。 …こんな時代だからね。 でも、さ。 その…あの…。 …どうしたの? えーと…あのね、 確かに、DEMは僕らの敵って 思ってる人が多い。 だけど、ボクは… 絶対に君の味方だし、 絶対に君を裏切らない。 だって君は…ボクの大切な人だから。 ……? あ、いや、その…。 ああもう! ボクは君のことが、好きなんだよっ!! …本当? ……本当。 …。 ……。 …調子に乗るな、ばーか。 ええええええっ!!? …うそ。 …凄く、嬉しい。 …!! そ、そうだ、草原に花が咲いたんだ。 とてもきれいだから、見に行こう。 …君に見せたいものがある。 一緒にいきたいところがある。 ねぇ、だから… ボクと一緒にいてくれないか? …うん。 「私…笑えるんだ」 「私…人を好きになれるんだ」
殺せ
…!!
…? どうしたの?
…ううん、なんでもない。
「目を閉じると、
私の中に誰かが語りかける」
「傷つけなければいけない」
「あのヒトを…傷つけなければいけない」
「私は…」
「ヒトではない」
…酷い有様だな。 …きっといつか、 この戦いも終わるはずなんだ。 エミルもDEMも、 手を取り合って歩いていける世界が…。 「傷付けなければいけない」 「…でも、傷付けたくない」 「だって、あのヒトは普通のヒトなのだ」 「あのヒトが傷付いたら、 悲しむヒトがいる」 「だから…ッ!」
「あのヒトはとても優しいけど、
とても強いヒト…」
「背後から襲い掛かった私は、
彼が私だと気がつく前に、
彼によって打ち倒されていた」
「…そう、狙い通りに」
「私は壊れて、彼は無事…」
「それを望んで、そうなって…」
「…それでいいはずなのに」
「……何故、
こんなに寂しいのだろう?」
「……何故、
この人は泣いているんだろう?」
…なんで…なんでだよ…! 私は、アナタの敵…。 アナタを傷付けるのが、私の務め…。 …でも、私はアナタを 傷付けたくなかった。 ただ…それだけのこと…。 そんな…!! …何故、涙を流すの? アナタには…その理由が無い。 私はアナタを傷付ける…敵…。 だから…いなくなればいい…。 でも、アナタが傷付けば、 悲しむ人がいるから…。 私が壊れても、泣く人はいないから…。 何を言っているんだ! 君がいなくなったら、 僕が悲しいじゃないか! 君がいなくなったら、 僕が泣いてしまうじゃないか! 私は人形だから… 心なんて、持っていないのだから…。 アナタが悲しむ必要なんか、無いのに。 きっと、この心は誰かの落し物。 偶然、私が拾ったから、 心があるように思っていただけ…。 だから、大丈夫。 アナタに…。 アナタに恋したこの気持ちも、 きっと誰かの借り物だから…! だから…全部忘れて。 気にすることは…ナいのだから。 アナタと私は…違うモノなのダから……。 「モウ、言葉も上手くツたわラない」 「あのヒトの顔モヨク見えナい」 「自分で望ンだコとなのニ」 「これデイイはずナのニ」 「今、わたシは…」 「トテモ、さみシイ」 誰か! 誰か! 助けてくれ! ボクは…ボクはこの人を失いたくない! この人が助かるのならば、 どんな条件でも……!! 「彼とモう会うコトは出来なイ」 「彼ノ声も、モウ聞けナい」 「彼ト一緒に歩くコトも、もウでキナイ」 「ソシテ彼ノ笑顔モ…モウ見レナイ」 「ツタエタイ…」 「伝えなきゃ…」 クロード…
ア イ シ テ ル
(回想終了)
…これまでの経緯を話した。
扉に触れると、
眩い光が周囲を包み始めた。
「開錠キー」を使えば、
ここから抜け出せるはずだよ!
僕はまだここに残って探し続けるから、
君は先に戻ってあげて!
「開錠キー」を使い、出口の外に出た。
アクロポリス地下で体験したことを
DEMに話した…。
少女の声は、段々と人間味を帯びてきた。
DEMの少女は、
肩を震わせながら思いを吐き出す。
…その言葉の羅列を、
ただただ黙って聞いた。
少女は眼を閉じ、静かに眠り始めた。
優しく、穏やかな表情で…。
…。
少女の体から、
光輝く小さなものが飛び出した。
「キカイのココロ」を入手した。
自分の中に、
感情が沸き起こる…
EPバッテリーに
10EPがチャージされた。
DEMは穏やかな表情で眠っている。
…一度、エレキテル・ラボトリーに
戻った方が良さそうだ。
…経緯を話した。